Chapter.3 OPUS JAPAN “POLARTEC Alpha T-shirts with CATHEDRAL
Capter 1
生ハムの塩気がメロンの甘味を際立たせる。
別の特性を持つ物質同士の組み合わせ。
特定の効果を狙うことは食以外でも、様々な分野に置いて確立されたテクニックです。
今回使用した2素材のうち、シェル側の素材はTen cの素材開発をした日本の会社(株)コマツマテーレのCOOLDOTS を使用しました。
サラサラの手触り、着ていないような軽さで、ウエストポーチに押し込んでも全くシワになりません。
最大の特徴は、目視できるレベルの穴が空いているということです。
その特性は皆さんお察しの通り。
①通気性
②シワにならない
③超速乾
④ストレッチ性
⑤マシンウォシュ可
⑥超軽量
⑦物理撥水&撥水加工
一般的なスポーツブランドのポリエステル生地と綿生地との速乾性能の比較をグラフに表したものです。
内側の汗も外からの雨も、圧倒的な速さで乾きます。
早く乾くときに一緒に熱を奪う。
動くと風が抜けて、乾きを促進させてさらに熱を放出することができます。
上記の特性を持つ生地ならいくらでも探せるんですが、重要なのは全ての項目の数値の高さと、⑦の物理撥水。
特筆すべき点は、目視できるレベルの穴が空いているのに、水を弾くことができる生地だということ。
今回のプロダクトに絶対に必要な(物理撥水)は、この穴によって半分完成したような物。
通気性と撥水の両立はスポーツやアウトドアウエアにおける永遠のテーマで、ゴアテックス、ポーラテック、ショーラー等々、最近のアウトドアブームも追い風になり、各社熾烈な開発競争をしています。
素材開発者としてそこに割って入る気などありません。
当たり前ですが、勝てるはずがありません。
私が欲しかったのは、あくまで “My Spec”
私が使いたくて、無いから作ることに。
そのメカニズムは、水分と生地の接地綿角度で決まる。
親水から撥水まで角度次第ということなのだそうです。
米がつかないしゃもじ、焦げつかないフライパン、ヨーグルトの蓋の裏側などは、LOUTUS (ロータス)効果といいます。
LOUTUS とは蓮の葉が水を弾く原理の応用です。
やはり、全ては自然が教えてくれるんですね。
早速、素材を調達してファーストサンプルを作成しました。
溶解糸という水に溶ける糸を繊維に織り込み、あとで溶かしてしまいます。
生地表面には物理撥水加工、糸には耐久撥水加工がされています。(耐久撥水とは洗濯で徐々に弱まります、通常は3洗〜5洗)洗濯によって撥水加工が弱まっても物理撥水は残ります。
まずはWOOL-Tshの型紙でサンプルのTシャツを作成。
小雨のタイミングで夜中ランニング&ピストバイクでテストすることにしました。
4月初旬
気温は18℃
小雨無風湿度 86%
コンデションはこんな感じで4月にしては蒸し暑い日でした。
ファーストインプレッションは、「マジか、寒いくらいやな。」
何も来てないような軽さと、ボディ前面から風が抜けていくのがわかる。
めちゃくちゃ快適 。
15分後、少し汗ばんできた時に弱点が判明しました。
なんか動き辛いんです。
原因は濡れた生地が体にペタッとくっ付いてくることでした。
撥水はしているし、速乾ではあるんですが、濡れながら走ったり、大量の発汗時にはブリース機能と速乾が追いかなくなり、ポリエステルが体にまとわり付くことが判明しました。
さらに、防水でなない穴があいている撥水です。
当たり前ですが、圧に弱い。
要は耐水圧の問題です。
ゴアテックスなどの防水性能の物差でもある耐水圧が弱いんです。
表面を流すことはできるものの、リュックが擦れた箇所や、強い風圧+水圧がかかると水が侵入してくる。
この日感じた弱点は3つ。
自転車程度の風で水が侵入する。(シリアスなアウトドアでの使用は不可)
渇きが追いつかず体にまとわり付く。(致命的)
体が冷えた。(20℃近くあったが芯から体が冷えてしまった)
帰路。
真っ暗な北新地を走りながら、私の頭にはある素材とのダブルフェイス、要はインスタレーションをドッキングする構想が生まれた。
弱点のおかげで COOLDOTS-TシャツはAlpha-Tシャツに進化することができました。
とはいえ、COOLDOTSの生地の特性とビジュアルは捨て難い。
COOLDOTSの特性を伸ばし、弱点を補う素材とのダブルフェイス。
ここで生ハムメロンです。
ライニング候補は3つありました。
①天然素材由来のコンポジット系
②サーマルのような点で体に触れる系
③POLATEC A ALPHA DIRECT
3素材とも同条件でテストした結果、ダントツの着心地と機能性だったのが、POLATEC ALPHA DIRECTです。
POLARTEC社のAlpha®Directは、既存の中綿素材Alpha®の最新進化版として昨年発表されました。
Alpha®とは本来米軍特殊部隊のコードネームです。
polartec社米軍が共同開発したインサレーション素材で、繊維長を細くし繊維同士を多層構造で編み事で、肌に直接着れる様にしています。
ロフト繊維形状と密度を調整することにより、衣服にした時の重量がさらに軽減されます。
この素材をテストしているのは米軍。
実践服を着て各地でマジでテストしています。
信頼性のある画期的なPOLYESTER 100%の素材と言えます。
Alpha®Directの中綿としての機能
①速乾性(信じ難い速さ)
②保温性(ほんのり温かい)
③圧縮性(軽さと小さくなること)
④通気性(見た目通りスカスカ)
⑤軽量性(テッシュくらい)
この素材の他の素材との決定的な違いは、素材が呼吸するような感覚があるということ。
注目は②保温性と④の通気性です。
長年パラドックスの関係性が崩せなかった相反する要素。
当たり前ですが通気すれば冷えて乾くし、密閉するば暖く蒸れます。
空気接地面積が非常に大きい素材です。
極細繊維が重なり合い、非常に多くの空気を溜め込む事ができます。
極細繊維は毛細管現象で水分を強制的に吸収し、広い表面積で速乾させます。
(動態時)動けば空気が抜け、渇き、通気し、(静態時)機密性をあげれば(シェル着用)暖かく、保湿する素材となるわけです。
米軍はこの2つの要素レイヤリングシステムを活かし、正式採用しています。
COOLDOTS の外壁と Alpha内壁によりOPJ-003 Alpha T-shirtが完成しました。
日米合同作戦ですね。
OPJ-003 Alpha T-shirt
型紙と着用感
WOOL Tシャツとのレイヤリングを考え、型紙はWOOL Tシャツベースにしています。
肩山のない直線的な肩から袖にかけてのラインは、どの様な肩幅の方が着ても治ります。
また、非常に大きなサイズレンジを持っています。
サイドファスナーはさらにブリースを促す為の物です。
内側の縫製使用は金属が直接肌に触れないようにしています。
裾口のドローコードは機密性を高めたい時に使用してください。
襟回しのパイピングはWOOL Tシャツと同じメリのウールを使用しています。
レイヤードした時に色素材共に馴染みます。