[IS] Isabella Stefanelli 20SS Vol.2
露出を拒み、その存在がベールに包まれていたIsabella Stefanelli 。
Isabella Stefanelli
今回は彼女自身のルーツを探ります。
あの発想とそれを支えるテクニックはいったいどこから来るのか。
本人から届いた文章をもとに彼女のクリエーションの秘密にせまります。
父から受け継いだテーラーの仕事が具体的に今の仕事にどう活かされているか?
それはこういえば伝わり易いかも、、
例えば私の仕事をダンスに例えてみます。
私は父からクラシックバレエをしっかりと学びました。
その後ジャズダンスも学びました。
するとクラシックで培った基本動作がジャズダンスで優雅なシェイプを生み出したんです。
この様な形で更に彼女の深層に迫ります。
Isabella StefanelliIsabella Stefanelliに12の質問
Q1 モノつくりを始めたきっかけ、そのルーツは?
モノつくり始めるきっかけには、そこに至る過去があります。
物心ついた頃から、父親の仕事であるテイラーを手伝いながら、洋服を作ることを続けてきました。テーラリングの世界では、パターンカッティングを学ぶところから、顧客の服をビスポークで仕立てること、また演劇用のオーダーメイドのコスチュームを仕立てることまでやりました。ファッション業界では、ヘッドテイラーとしてコレクションの制作や クオリティコントロールを経験し、ロンドンでは、デザイナーとしての仕事や、クリエイティブパターンカッターの仕事も経験し、今またテイラーをしています。
これはまさにモノづくりのループとも呼べます。常に自分の周りにあったアートやアー ティストはもちろん、自然環境など、日々の中で見て感じたことを含め、全てが一つの線 として繋がっている感覚です。小さな頃からそれらを自分の一部として、今まで生きてきました。そういったものが、意味露出していると思います。 それぞれが点のように見える出来事や経験は全て繋がっており、それが今に至っています。
ISを始める前は、とても小さなブランドで同じようなマインド持っていたり、自分が一緒 に仕事をしたいと強く思える人達だけと仕事をしていました。 仕事の場所は問題ではなく、私は自分にとって心地よい精神でいられる巣のようなものを 常に探していました。
ある時、自分の中から欲求が湧いて出て、静寂の中で手縫いのカバンを作っていました。 最初に思ったのは洋服から少し離れたいということです。ただ、自分の一連の人生のエピ ソードの一つとして、離れたいという気持ちになったという事実を誰かに聞いて欲しかった。そうして1年くらい経った後、この小さな秘密を打ち明けました。その相手が自分を信じてくれて、ずっとサポートしてくれていた秋吉さんです。彼は聞いてくれました。それがISとしてモノづくりをするきっかけと言えます。
Q2 テイラーでの仕事は今のモノつくりに活かされていますか?
もちろん活かされていますが、具体的にどう活かされているかと言われると難しいので、 ダンスに例えてみましょう。
私はクラシックバレエをしっかりと学びました。そしてその後ジャズダンスも学びました。クラシックで培った基本動作を知っていると、ジャズダンスで優雅なシェイプを生み 出します。
それは過去にあった自分への問いかけをいかに変えることが出来るかという、私の叫びなのです。
父はテーラーであったと同時に絵描きでもありました。なので洋服の生地の匂いだけでなく、油性絵の具の匂いも幼少体験として強烈な印象があります。父は表現主義派を好んでいて抽象画家でした。彼は上下左右の壁一面を数えきれない程の額縁といくつかの彫刻で飾られた家を持っており、それはまるでアートギャラリーに住んでいるようでした。つまり私自身が表現していることは、自分が感じてきたそのものなのです。
Q3 あなたの服の創り方は、技術的にもテイスト的にも一般的な方法とは大きく違うと思います。モノつくりはどのよ うな過程で形にしていくのですか?
私は全てに疑問を持って様々な試みをしています。それは自分自身と対話をすることに近 いです。その過程全てを具現化させてアトリエのボードに並べることは出来ません。なぜなら自分自身がボード、それ自体だからです。私は作ることでクリエイトします。考えて、感じ て、感情が揺らめき、呼吸を整えて、創造していきます。
Q4 1人でやっているんですか?アシスタントはいるのでしょうか?
現時点で、クリエイティブな作業には誰も立ち会いません。それらはとても内なることで、私には静かで秘密の巣が必要だからです。
ただし完全に一人ではなく、私は自分のチームを構成しています。スタッフには私の縫製や手縫いのやり方を教えていて、それをしっかりとチェックしています。チームのみんなはとても頑張ってくれています。
Q5 尊敬しているデザイナー(モノつくり全般)はいますか?またその理由を教えて下さい。
正直で、尊敬できて、働き者で信頼出来る人をすべてを尊敬しています。全ての人が気兼 ねなく思っていることを言ったり、振る舞ったり出来るべきだと思います。自分の知識や経験により、表現はより明確になります。美しいもの、素晴らしいものにショートカットはありません。自分にはそれで十分です。
Q6 今いちばん欲しいものはなんですか?
自らの知的好奇心、クリエイションを掻き立てるもの。
Q7 何度か来日していると思いますが、日本のファッションについての印象は?
日本について思うことは、新たな方法での表現に対しての感度が高いということです。
日本の人々は新たな表現に対して、貪欲に自身の考えを巡らせます。 私自身、日本の人々によって成り立っていると感じます。皆さんが私を受け入れてくれたとも言えます。
ファッションについて聞いていますが、私はそんなにファッションというものを見ていません。しかしモノ作りやアートという意味において、職人や食事、伝統や精神世界に触れてきました。私は彼らがどう自分を表現するかと言うことについて、それほど意見を持っていませんが、その代わりに彼らの考え方にはとても共感しています。見ることを通じて、自分が感じたことに気がつきます。言い換えれば、批評家として質問に答えるのが難しいとも感じます。
Q8 作品に捧げられた偉人やアーティストなど、特定の人物 がフィーチャーされていますが、なぜその人たちが選ばれているのですか?それによって伝えたい事とは?
私は彼らのフィルターを通して物事を見て、彼女らのフィルターを通して表現します。仮に彼らが何かを言ったり、その思いを表現できたとしたらというように。それに自分自身を彼らの後ろに隠したりします。
Q9 一番最初に作ったコレクションのことを教えて下さい。
最初のコレクションは手縫いのバックでした。洋服からの逃避という試み。私としては、余り物を使って美しいものを生み出したかった。なのでロンドンを回って家具用のレザーの余りや、何かの理由でもう使えないと判断されたレザーを探しました。そういう素材を探すのは楽しかったですし、新たな美しいものを生み出して、全ての素材に 秘められた美しさが宿っていると表現したかった。 結果全て手縫いになったので、時間のかかる大変な作りになりました。針を正確に持って、正しく縫うことは簡単ではありません。全ての素材に異なる縫製のアプローチを要求されるからです。
縫製用の穴を先に開ける事をせずに、レザーに直接針を通すことは大変で、とても疲れる作業です。また、その他にもモールド(金型)を使う作業や、染色もしました。全てが息切れするような作業でした。
次のコレクションは手機の生地を使ったコレクションで、その大変さに息切れしました。そもそも洋服をやるつもりはなかったんですが、初回の展示会で自分が着る服をいくつか作って行きました。というのもパリの3日前になって着るものがないと気がついたからです。それで急いで、シャツとパンツとコートを作りました。展示会の時、自分がきている服を誰が作った物なのかを何度も聞かれました。その時私は『すみません、これ出発ギリギリで作ったものなの』と答えていました
Q10 モノつくりにおいて一番譲れないことはなんですか?
気遣い、愛情、深さ、真実、忍耐。
Q11 今後やってみたいことや進行中のあらたな試みはありますか?
「私は常にクリエイトしていて、それは止まることはありません。なのでクリエイティブ なことをするのは、私の人生であり、私自身であり、それは必要なことなのです。
最近大きな織機を手に入れました。自分がこれまでに手に入れた中では最も大きな90cm幅の物で、ウィンチェスターの美しい女性から譲ってもらいました。 私はもっと自分自身で織りたいと思っていて、スタジオでスペシャルなアイテムを作りたいと思っています。自分自身のやり方で技術を発展させなくてはいけませんが、私は木が大好きですし、この織機を家族の一員のような感じています。
話は逸れますが、私は自分でパンを焼いて隣人に配ったりするのが好きです。他人のために何かを作るのが好きなんです。洋服も同じです。 そしてその行為によって皆を満足させられているかというプレッシャーを常に感じています。
Q12 あなたの服を手にとる日本のファンに一言頂けますか?
Yukkuri Yukkuri Ippo Ippo ganbarimasu. (原文まま)
少しだけ彼女の内側を見せてくれた気がしました。
そしてまたISが好きになった。
どうしたら伝わるのか。
この先は袖を通して頂くしかありません。
VOL3はいよいよ各モデルのご紹介です。